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猫と文学(1) 「シュレディンガーの猫」有川ひろ著(講談社)

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人間と猫は数千年前からの長い付き合いです。そのため、文学や絵画、音楽など猫をテーマとした様々な作品が生み出されてきました。

これから不定期に、猫をテーマにした文学作品を取り上げていきます。

今回は、有川ひろ著の『みとりねこ』(講談社)に収められた「シュレディンガーの猫」です。

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000353748

 

有川ひろさんは、幅広い世代から人気を集める女性小説家です。『図書館戦争』シリーズや『三匹のおっさん』シリーズのほか、映画化された『阪急電車』『県庁おもてなし課』『レインツリーの国』などでも知られます。

 

そんな有川ひろさんの最新作が『みとりねこ』。

タイトル通り、猫好きの有川さんならではの猫にまつわる短編や掌編が7つ収められています。

その中のひとつが「シュレディンガーの猫」です。赤ちゃんが生まれたばかりの元出版社勤務で漫画編集者だった妻と、その妻が担当していた漫画家の夫とが、捨て猫を赤ちゃんと一緒に育てていくというお話です。

 

この作品のタイトルになっている「シュレディンガーの猫」というのは実は、現代物理学においてアインシュタインの相対性理論と並んで基本となっている量子力学に関する思考実験のことです。

 

細かいところはよく分からないので省きますが、量子力学の世界においては、分子や原子、電子など人間の目にはまったく見えない超ミクロの粒子は、位置とその運動量を同時に確定することは不可能である、とされます。

 

オーストリア出身の物理学者シュレディンガー(1887-1960)は、このミクロの世界で起こる現実世界の感覚では理解できない現象を揶揄するため、次のようなことを考えました。

 

猫と放射性元素を密閉した鋼鉄の箱の中にいれる

放射性元素が崩壊すると毒ガスが放出されて猫が亡くなる仕掛けになっている

放射性元素が1時間あたりに崩壊する確率は50%とする

1時間が経った後の箱の中は、放射性元素が崩壊している状態と崩壊していない状態が50%ずつ

箱を開けてみないと、猫は生きているかもしれないし、亡くなっているかもしれない、重ね合わせのような状態にある

 

有川ひろさんの作品では、妻がお産のために実家に帰っている間に、漫画家の夫がゴミ捨て場で段ボールの箱を見つけます。中をのぞいたら二匹の猫がいて、一匹は生きており、もう一匹は亡くなっていた。そこで、生きている子猫を連れて帰り、妻に内緒で育てていたというのです。

 

箱を開けてみると、生きている猫と亡くなった猫がいた、というところから「シュレディンガーの猫」というタイトルを付けたのでしょうか。

ただ、この作品の主題はそんなところにはなくて、赤ちゃんと子猫のほっこりする触れ合いなんです。

詳しくはぜひ、本を手に取って読んでみてください。

 

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