猫と文学(9) 作者不詳『猫の草子(ねこのそうし)』2022.9.8
人間と猫は数千年前からの長い付き合いです。そのため、文学や絵画、音楽など猫をテーマとした様々な作品が生み出されてきました。
猫をテーマにした文学作品を取り上げるシリーズ。
今回は、江戸時代の御伽草子『猫の草紙』です。
『猫の草子』は江戸時代の初期、大阪で書肆(出版社)を営んでいた渋川清右衛門という人物が『御伽草子(おとぎぞうし)』として、絵入りの木版刷りで刊行した物語集におさめられた一篇です。
話のあらすじは次のようなものです。
1602年(慶長7年)の8月、京の町中に猫の綱を解いて放し飼いにせよとのお触れ(命令)が出ました。それまで猫は綱につないで屋内で飼われていたのです。
これに猫たちは喜びましただが、困ったのが鼠たちです。うかうかしているとは食べられてしまいます。
ある夜、京に住む高僧の夢に鼠の和尚が現れ「仲間たちが困っている」と訴えましたが、高僧は鼠が食べ物を食べたり建具を齧ったりして人を困らせていると言いました。
次の夜、今度は虎毛の猫が高僧の夢に現れ、インドや中国で怖れられた虎の子孫だといいます。狭い日本では小さくなって多くの人に可愛がられたものの、綱を付けられてきたので不自由だったので、今度のお触れはありがたいといいます。高僧からは鼠を食べるのをやめてはと諭されるが、天から与えられた食べ物なのでやめないと言い張りました。
その後、鼠の和尚が再度あらわれ、自分たちは近江(滋賀)へ引っ越すことにしたといいます。
どうりで最近、京では鼠をあまり見かけなくなったとか…。
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『御伽草子』には23篇の物語がおさめられており、大部分は室町時代の話です。江戸時代を舞台にしたのは「猫の草子」のみです。
猫をつながないようにというお触れが1602年、京の町中に出されたのは事実だったそうです。当時、戦乱の世が次第に落ち着いてきて都市部に人が集まり、鼠の被害が深刻になってきていたことが背景にあると考えられています。
ただ、自由に出歩けるようになった猫の中には、行方不明になったり犬に噛まれたりするケースもあったといます。
そもそも猫は仏典とともに7世紀ころに日本に伝わり、長い間、珍しい生き物として皇族や貴族が愛玩用に紐につないで飼っていました。
それが江戸初期の頃から世の中を自由に歩きまわるようになっていったのでしょう。
『猫の草子』はそうした歴史の一断面を伝えているように思います。
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